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トランス@America !(feat オイスターボーイの逆襲)
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パブでアブサンを飲んでいると、とても憂鬱な気分になった。まるで体中を癌に侵されているようだった。全体は暗く、日常的なものの日常性が一層いやらしく思えた。人々は酒を飲み、上司の悪口や恋愛の話を口々に行っていた。あまり、音楽が聴こえない。トーマスベガスはブルックス・ブラザーズで買った名刺ケースからマザーテレサの以下のような言葉が書かれた紙包みにつつまれたMDMAを吸引した。 - 叶えられなかった祈りより、叶えられた祈りの上により多くの涙が流される トーマスベガスは呆然とした意識の中で、井戸の中に落ち、誰にも助けられずに過ごした一日のことを思い出していた。その日は故障したオーブンくらい暑い一日で、父と親戚のおじが住む広島沖の小島を訪れていた。島の半径は5キロ程度で、人口もいくつかの集落が点在しているだけなのであまり多くはなかった。彼は、まだ小学五年生で、オナニーも覚えてはいなかったが、探究心が女性の体に向わない分、大人の目を盗んでは勝手に遠くに行ってしまう性向があった。 おじの家からは程遠い島の南端まで辿りつき、そこで彼は一人、空間に空いた井戸を見つけてしまった。井戸の奥にはおそらく 何もない、 ということはわかっていたが、ここまでくるとどうしてもはいってみなくては後悔しそうだった。全てが一瞬と、連続する全体性の中にしかないことは、母の死と、昆虫の無数の足をもぎ取る喜びの中に知っていた。 彼は、井戸の脇に腰掛けると、ゆっくりと片足を投じてみた。空気はひんやりとして心地よかった。声をだしてみると反響があったが、それほど深くはないようだった。小五の男の子にとって、小さな暗闇は母親の子宮を連想させてもおかしくはなかった。両足をいっきに暗闇の中に投じると、彼は底が思いのほか深いことに気づかざるをえなかった。足は、スカイダイビングをしているかのように、地面を求められないまま浮遊し、算数の解や、有効なエックスの値を見つけられないまま、無駄な計算を続けていた。気がつくと、彼は闇の中で骨折をし、身動きがとれないまま、天を見上げていた。
by tokyo_org
| 2005-08-26 20:00
| 第一章 Opera City
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